認知行動療法(CBT)とは・意味

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認知行動療法(Cognitive Behavioural Therapy; CBT)

認知行動療法とは、簡単に言えば、物事の見方を現実的で適応的なものに修正すれば、気分も改善するという治療手法だ。つまり認知行動療法は、認知を変えることで、辛い気分や自分を苦しめてしまうような行動を改善する心理療法である。

気分感情は状況を、どんな風に解釈するかで決まる。

例えば、「数学の問題がなかなか解けない」という出来事について、「自分には数学の才能がないのだ」と考えれば、不安感や失望感といった気分が生じる。一方、「難しいからこそチャレンジのし甲斐がある」と考えれば前向きな気分になる。

以下では、認知行動療法の意味を理解するのに最低限、知っておく必要があるであろう概念や治療技法を解説する。

認知とは

認知とは物事や出来事をどう理解するかのことである。つまり認知とは「状況をどう受け止めるか?」を意味する。

「考え方」・「見方」・「思考」・「解釈」といった言葉はしばしば認知と同じ意味で用いられる。

あわせて非機能的認知という用語も知っておきたい。

非機能的認知とは、その認知が現実的か否かに関わらず、恐怖心や自己無価値感といった、気分障害を引き起こすような認知のことである。

認知は理屈の上では以下の4パターンに分類できる。

  1. 現実的でかつ機能的認知(ex.「何事も無理をしすぎないことが大切だ」)
  2. 非現実的でかつ機能的認知(ex.「きっとO型だから●●さんはおおらかなのだろう」)
  3. 現実的でかつ非機能的認知(ex.「もう留年は避けられない。就活に悪影響が出る」)
  4. 非現実的でかつ非機能的認知(ex.「自分は意志力の弱い無価値な人間だ」)

認知モデルとは

認知モデルとは、「出来事が直接に気分に影響を与えるのではない。その出来事をどのように理解したかで気分が決まるのだ」という考え方である。

治療では認知モデルを度々強調することが重要である。

尚、認知モデルの視点から見れば、気分障害とは、本質的には《認知障害》である。

補足①自分を余計に苦しめてしまう行動とは

自分を余計に苦しめたり、病状の悪化につながるような行動のことを非機能的行動という。例えば、うつ病では「一日中、家にこもりベットで過ごす」という非機能的行動によって、患者は達成感や満足感を得る機会を自ら放棄するだけではなく、「寝ていることしかできないなんて、自分はダメ人間だ」といった具合に、自責の念を募らせ、余計に抑うつ状態を悪化させてしまう。

こうした非機能的な行動は「ベットで過ごすことが一番楽だ」という非現実的な認知から生じる。多くの研究は、家事や散歩といった適度な活動をすることが、気分感情状態の改善にとって、極めて重要だという事実を示唆している。

補足②行動により認知を修正する

行動を変えることで認知をより妥当で有用なものに修正し、気分を改善させるアプローチも盛んに用いられる。その代表格は行動実験(※1)や暴露療法といった技法である。

(※1)行動実験(behavioral experiment)とは、無気力や億劫感に対処する認知行動療法の代表的な技法である。ある課題について、予想満足度や予想難易度を予め書き留めておき、実際に、小さな課題を行ってみる(例えば20分間、部屋の片づけをする)。すると多くの場合、予想よりも、実際の方が、難易度は低く、満足度や達成感は高くなる。その結果、行動から得られる報酬を、不合理に割り引いていた事実が判明し、認知が改善する。

自動思考とは

自動思考とは「今この瞬間に頭に思い浮かんでいる考えやイメージ」を意味する。認知行動療法を理解する上で最も基礎的な用語である。普段の生活では自動思考を自覚することは滅多にないが、意識して、自分の考えを観察する練習をすれば、比較的簡単に自動思考を特定することができる。

自動思考は、当然、認知であるから、自動思考の内容と気分は密接に関連している。認知行動療法では、自動思考を特定し、より現実的で妥当な考えに修正することで、気分の改善や、非機能的行動の改善を目指す。

認知行動療法の特徴

  • 良好な治療同盟の構築を重視する。2人で協力して治療作業にあたる。
  • 認知行動療法では患者がいかに積極的に治療に参加するかが回復の鍵である。
  • 問題に焦点を当てそれに対する目標を共有する。つまり目標志向的である。
  • 「今現在の具体的問題」を重視し、原則、過去には目を向けない。例外はある。
  • 再発を防ぐべく、最終的に患者自身が自己の良き治療者となれるよう積極的に心理教育を行う。
  • 患者は治療ノートを用意し、原則、1セッションごとにホームワークが課される。
  • 認知行動療法はブリーフセラピーであり、治療回数の目安は6~14回である。
  • セッションを構造化することで治療過程を患者に理解させ終結後の自己治療能力を高める。
  • 協同的実証主義の理念に沿って2人で一緒に協力しながら妥当で助けになる考えを探す。
  • 認知的枠組みを外れない範囲内ならば他派の心理療法の技法も積極的に取り入れる。

認知行動療法はどのように歪んだ思考を修正するのか

認知行動療法は、不安や絶望感といった、嫌な気分を引き起こす「誤った考え(※2)」を修正することで、大うつ病性障害といった心の問題を治療する技術体系だということは既に述べた。

3つのアプローチ

  1. 認知的アプローチ(認知を修正し、気分/行動を改善)
  2. 行動的アプローチ(行動によって認知を改善し結果的に気分を改善する)
  3. 問題解決アプローチ(心ではなく現実の問題を解決する)

(※2)不快気分の元ととなる考えの全てが、必ずしも誤ったものだとは限らない。中には十分に妥当で、合理的な考えにもかかわらず、気分障害の一因になっているような思考も存在する。しかし、そうした認知はたとえ正しくても、非機能的認知ではあるので、これを適応的な考えに修正するようにする。もしもその正しさ故に、適応的な考えに修正することが難しいならば問題解決アプローチを用いる。

以下では認知的アプローチの中でも最も基本的な技法を概説する。

認知行動療法における最も代表的な認知的技法

認知の修正に、最も効果が見込まれ、実践でも多用されるのが、ソクラテス的質問法という方法だ。下記に示した、ソクラテス的質問法は、自動思考の妥当性を検証し、そこに含まれる認知の歪みを修正するのに役立つ、強力で、体系的な方法である。

ソクラテス的質問法

1、状況についてより現実的で適応的な説明を見つけ出すための質問

  • その自動思考を支持する根拠は何か?(⇒根拠は[事実]であることが好ましい)
  • その自動思考を反証し得る根拠は何か?(⇒根拠は[事実]であることが好ましい)
  • 別の見方にはどんなものがあるか?

2、破局的な予想を妥当な予想に修正するよう手助けする質問

  • 最悪のシナリオは何か?
  • もしその最悪の結末が起きてしまったとしたら、どのように対処するといいか?
  • 最善のシナリオにはどんなものがあるか?
  • 最も起こり得る現実的なシナリオはどんなものだろう?

3、自動思考に対処することの意味を認識させる質問

  • この自動思考を信じ続けるとどのような結果になるか?
  • この自動思考を修正するとどのような効果があるか?

4、自動思考と距離を取り、自分自身に過度に辛くあたっていることを自覚させる質問

  • もし_____(親しい人、家族や親友)が自分と同じ状況にいたら、あなたは、なんと言ってあげますか?

5、問題解決を促す質問

  • 認知的あるいは行動的にこの自動思考に対し、どんなことをするといいか?

認知行動療法とスキーマ(信念)

認知行動療法を理解するには、スキーマ、つまり信念についての解説が必須であろう。

認知行動療法では信念を、

  • 中核信念
  • 媒介信念

の2つに分けて考える。

まず大元となる「中核信念」があり、この中核信念がネガティブなものであれば、この中核信念が実現してしまうことを全力で防がなくては、自分を保っていられなくなる。

そこで「媒介信念」は、中核信念の露呈を防ぐためのルールこうあれば中核信念に対処できるという思い込み)や中核信念についての態度として機能する。

そして、媒介信念で定めたルールに沿って複数の埋め合わせ戦略が出てくる。

「埋め合わせ戦略」とは、激しい苦痛を伴うネガティブな中核信念を実現させないための行動的戦略のことである。

抽象的だと理解しずらいので次節では具体例を示す。

認知行動療法における中核信念、媒介信念、埋め合わせ戦略の例

中核信念(認知のコアとなる中心教義)

「自分は意志が弱く勉強ができない無知で価値のない人間だ」

媒介信念(こうあれば中核信念に対処できるという思い込み・ルール・態度)

媒介信念の「態度」

「意志が弱くて勉強ができない」というのは自分が無価値な、なによりの証拠だ。この先、勉強が苦手なまま生きていくには、仕事で成功し、周囲から認められることで、なんとか挽回可能かもしれない。

媒介信念の思い込み(ルール)[ポジティブな側面]

仕事がうまくいけば、自分の価値を保てる。周囲に優秀だと認められることが何よりも大切だ。

媒介信念の思い込み(ルール)[ネガティブな側面]

仕事がうまくいかず、無能扱いされれば、[中核信念が実現し]最悪の結末に至るだろう。

埋め合わせ戦略(中核信念の実現を阻止するための行動的戦略)

  • 自分自身に高い要求水準を求める。
  • 完全主義的に振る舞う。
  • 他人の非難を回避し、自分の願望を犠牲にしてでも、相手の期待に応える。
  • ネガティブな気分感情を全力で避けるようにする。
  • 「勉強が苦手」という欠点の克服に努める。

認知行動療法で「信念」を変容する

信念は生まれ持ったものではなく、後天的に学習したものなので変えることができる。

治療の初期においては表面的な自動思考を検討・修正することが重要だが、セッションの後半では、中核信念や媒介信念を変容し、心の問題の一番根っこにある部分を解決しなければならない。

認知行動療法により高い治療効果を見込める疾患のリスト

精神心理系の疾患

  • ほぼ全ての気分障害
  • 不眠症
  • 薬物乱用
  • ギャンブル依存
  • ADHD(注意欠陥/多動性障害)
  • パーソナリティ障害
  • 双極性障害
  • 統合失調症
  • カップルや家族間の問題

非精神心理系の疾患

  • 慢性腰痛
  • 偏頭痛
  • 耳鳴り
  • 癌による痛み
  • 過敏性腸症候群
  • リウマチ性疾患による痛み
  • ED
  • 病的肥満
  • 高血圧症

まとめ

認知行動療法は、精神分析の限界を悟ったことをきっかけに、アーロン・T・ベック博士が創始した。思想的はカレン・ホーナイやアドラー、論理療法のアルバート・エリスなどの影響を色濃く受けている。

またその効果は極めて強力で、現存する心理療法で、薬物療法と同等かそれ以上の、治療成績が統計学的に示されている数少ない精神療法である。

認知行動療法による援助の流れ

  1. 認知が現実的で妥当なものに修正されれば、気分感情状態は大幅に改善する。
  2. 傾聴や共感を示し良好な治療同盟を確立することが全ての土台である。
  3. 初期段階から各セッションで得られたデータを元に患者の《信念》を同定するよう努める。
  4. 最初は信念ではなく表層的な自動思考の改善から始める。
  5. 患者の積極的な参加を促しチームとして協力しながら実証的に認知の妥当性を検証する。
  6. 心理教育を重視し、治療終結時点で患者が独力で自己治療できる状態を作り再発率を下げる。
  7. 中核信念や媒介信念を変容させ、心の問題の根本原因を取り除く。

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