わかる!自分でできる認知行動療法入門-心を楽にする13の方法

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認知行動療法ってなんだ?

私たちは普段、物事や出来事を主観的に解釈しています。そして、そうした主観的な判断は概ね、うまく機能しています。しかし、強いストレスを感じたり、うつ状態になるとこうした主観的な解釈に歪みが生じてしまいます。具体的には自分を過度に責めてしまったり、無気力な状況に陥ってしまいます。それらが、さらに、考え方を偏らせるという悪循環が生じてしまうのです。

認知行動療法(Cognitive behavioral therapy:CBT)とは、こうした認知の歪み(=考え方の偏り)を、より合理的で現実的なものに修正することによって、バランスのとれた見方をできるようにし、その結果として、不安感や憂うつ感を取り除き、元気で楽しい毎日を送れるようにするための精神療法です。

うつ病、不安障害、SAD、強迫神経症、PTSDといった心の病気で悩む方だけではなく、精神的に健康な人が、もっと幸福で楽しい人生を手に入れることにも役立つ素晴らしい精神療法です。

認知行動療法では、自分自身を苦しめている思考の誤りを指摘し、これを修正することで、嫌な気分を取り除きます。そして、認知行動療法はこう考えます。

 

真実は私たちを自由にする。

 

つまり、状況や出来事に対する考え方が十分に合理的で現実的ならば、思い悩む必要はなくなるというわけです。

尚、認知行動療法は米国の精神科医、アーロン・T・ベックにより創始されました。認知行動療法は今現在、世界で最も信頼されている心理療法で、薬物による治療と同等かそれ以上の効果があることが統計学的に証明されています。

そして認知行動療法の素晴らしい点はセラピストの力を借りなくても自分ひとりでできることです

そのため、この記事は、読者の方が自分一人の力で認知行動療法をできるなるように工夫をこらしています!

以下ではまず、認知行動療法の基礎知識をお伝えし、続いて、気持ちを楽にする13の具体的なテクニックをご紹介します。

認知行動療法の最終目標は「自尊感情」を高めること

自尊感情とは簡単に言えば自信のことです。自尊感情のことを自己肯定感と呼ぶこともあります。
[自尊感情]=[自己肯定感]=[自信]という関係です。

認知行動療法の最終目標は自尊感情を高めることです。なぜなら、自尊感情が低ければ低いほど、様々な悪影響が生じるからです。自尊感情が非常に低い状態、すなわち、すっかり自信喪失に陥っている状態だと、以下に挙げるような悪影響が生じます。

  • 「自分には日々の生活で生じる問題に立ち向かう能力がない」と思い込む。
  • 「自分には他者と良好な人間関係を築く能力がない」と思い込む。
  • 四六時中、不安、恐怖、絶望、悲しみ、イライラといった気分が続く。
  • 動機付けが極端に低下し無気力になる。
  • やるべきことを先送りにするようになる。

自尊感情がとても低い状態だと、このような悪影響のため、日常生活を送ることが難しくなってしまいます。従って、認知行動療法の最終目標は、ネガティブで非現実的な思い込みを、合理的思考に修正していくことで、自尊感情(=自己肯定感)を回復させることなのです。

認知モデルとは?

認知行動療法は認知モデルに基づいた精神療法です。認知モデルとは、状況そのものが、あなたの不安や憂うつを引き起こすのではなく、状況を、どのように理解するかで気分が決まるというモデルです。状況そのものは、あなたの気分を左右しません。あなたの考え方だけが、あなたの気分を決めるのです。

例えば、気になる異性を食事に誘ってみたが、断られてしまったという状況があるとします。この状況を「きっと、あの人は、自分に興味がないから断ったのだ」と解釈すると、気分的には、落胆したり、悲しい気持ちになったりしますよね。

一方、同じ状況でも、「たまたま予定が入っていたのだろう」と考えると、気分的には、すこしがっかりするかもしれませんが、落ち込んだり、悲しくなったりはしないですよね。

このように状況そのものが直接に気分に影響を及ぼすことはないのです。あなたの気分を決めるのは、その状況をどういう風に理解したかなのです。つまり「考え方=解釈=認知」こそが気分を決定するのです。このような理論を認知モデルと呼びます。

認知モデルを図解して理解を深めよう

認知行動療法(以下認知行動療法を「CBT」と呼ぶことにする)は認知モデルに基づいた精神療法です。以下に認知モデルを図解した例をいくつかご紹介します。これらを見れば状況そのものが気分を左右するのではなく、「全ての気分は考え方次第だ」ということがより一層ご理解頂けると思います。

【図解例1】

[状況]明日はマラソン大会だ。

[認知]できればマラソン大会にでたくない。苦しいだけでなんの得もない。

[気分]憂うつ、億劫

 

【図解例2】

[状況]明日はマラソン大会だ。

[認知]走るのは大変だが良いダイエットの機会だ。

[気分]楽しい、ワクワクする、安心etc……

 

【図解例3】

[状況]恋人がいない。

[認知]恋人のいない人生なんて退屈でつまらない。生きるに値しない。

[気分]不安、憂うつ

 

【図解例4】

[状況]恋人がいない。

[認知]素敵な出会いに恵まれるに越したことはないが、一人でも物事を楽しむことはできる。

[気分]安心

 

つまり、大抵の場合、あなたを苦しめるのは状況そのものではなく、あなた自身の考え方なのです。このような理論を認知モデルといいます。

認知行動療法(CBT)はポジティブ思考ではない

CBTはポジティブ思考ではなく現実思考を重視します。なぜならCBTの根底にある考え方は「真実こそ私たちを自由にする」というものだからです。巷の自己啓発書では、ポジティブ思考をやたらと勧めてきますが、ポジティブ思考には、ほとんどなんの意味もありません。逆効果な場合すらあります。非現実的なポジティブ思考は、非現実的なネガティブ思考と同じくらい有害な思い込みです。そこで、CBTは物事をより合理的・現実的に考えることで、間違った思考からあなたを開放し、前向きで、元気な心を育みます。つまり、現実思考がとても重要なのです。

非合理的で非現実的な思考を「認知の歪み」と呼ぶ

CBTでは認知の歪みを、より合理的で現実的なものに修正することで、健康的な精神状態を実現します。認知の歪みとは、非論理的で非現実的な考えのことです。典型的な認知の歪みには様々なものがありますが、ここでは一例として感情的理由付けという思考の誤りをご紹介したいと思います。

感情的理由付けは、気分を理由に物事を判断するというものです。しかし、実際には、気分は状況の良し悪しを決める判断材料にはならないのです。

例えば、「飛行機に乗るが怖い」という考えは、典型的な感情的理由付けです。怖いからといって、飛行機が危険な乗り物なわけではありません。実際、飛行機は車よりも安全ですよね。怖いという感情は、「飛行機は危険だ」という考えの根拠にはならないわけです。

[状況]飛行機に乗る

[認知]こんなに怖いのだから、この飛行機は危険に違いない

[気分]不安、恐怖

また、例えば、「明日のプレゼンがすごく不安だからうまくいかないだろう」というのも、歪んだ認知です。今、不安を感じることは、明日のプレゼンがうまくいかない根拠にはなりません。

[状況]明日、大勢の前でプレゼンをする予定がある。

[認知]こんなに不安なのだからプレゼンは失敗するに違いない。

[気分]不安、恐怖、憂うつ

あるいは、「受験に失敗し、絶望を感じるので、自分の将来はひどいものになるだろう」というのも感情的理由付けですよね。今現在の絶望感は将来がひどいものになるという悲観的な予測の根拠にはなりません。

[状況]大学受験や高校受験に失敗した。

[認知]絶望を感じるので将来はひどいものになるだろう。

[気分]絶望、不安、恐怖、悲しみ、憂うつ

これらの例からも分かる通り、認知の歪みこそ嫌な気分の原因です。こうした歪んだ考え方を、合理的で現実的なものに修正すれば、簡単に元気な心を取り戻すことができるのです。

自動思考とは?

自動思考とは、絶えず頭の中を駆け巡っている「考え=認知」のことです。特に意識しない限り、日常生活で自動思考に気が付くことは滅多にありません。しかし、少し練習をすれば自動思考を意識化できるようになります。CBTの技法を使って悲観的な考え(=認知の歪み)を修正するには、まず最初にどんな自動思考が自分を苦しめているのかを特定する必要があります

※CBTでは自動思考を見つけることを、自動思考を同定すると言うことが多い点に注意しましょう!

つまり、

[ネガティブな自動思考]⇒[嫌な気分]

[ネガティブな自動思考を修正]⇒[良い気分]

という構図になっているのです。嫌な気分の原因となっている自動思考は大抵の場合、真実ではなく、大なり小なり、認知の歪みを含んでいます。

例えば、この記事を読んでいるとき、「あなたの頭の中にはどんなことが思い浮かんでいますか?」もしかしたら以下のような自動思考を同定できるかもしれません。自動思考こそが、あなたの気分を左右することを忘れないようにしてくださいね。

  • 「たいして役に立たない記事だ」⇒イライラ
  • 「もしかして、この記事は自分の助けになるかもしれない」⇒期待感
  • 「認知行動療法を理解するのは難しいかもしれない」⇒不安

辛い気分の元となっている自動思考を同定したら、今度は、その自動思考が本当に真実かどうかを、じっくりと検討する必要があります。そして、そうしたネガティブな自動思考の中に論理的な誤りを発見し、これを修正すれば、気持ちが楽になるわけです。

尚、「自動思考」、「認知」、「考え」、「思考」、「解釈」といった用語はどれもほとんど同じ意味です。

次節では、いよいよ認知を改善し、気分を楽にする具体的な方法をご紹介します!

自動思考を同定・修正し気持ちを楽にする方法

想像してみて下さい。「友人にメールを送ったがなかなか返信が返ってこない」という状況で、あなたは不安を感じているとします。そこで、意識して、「今この瞬間どんなことが頭に思い浮かんでいるか?」を調べてみた結果、あなたは「友人は自分のことを嫌っているに違いない」という自動思考を同定しました。

この悲観的な考えこそが、あなたを不安にしている根本的な原因です。メールの返信が遅いという状況そのものが、あなたを不安にしているわけではない点に注意して下さい。この自動思考は本当に真実なのでしょうか?本当にあなたは不安感に苦しめられる必要があるのでしょうか?

[状況]友人からのメールの返信が遅い

[自動思考]嫌われているからメールが返ってこないのだ。

[気分]不安、悲しみ、イライラ

ネガティブな自動思考が本当に真実かどうかを検討する

ネガティブな自動思考が本当に合理的で現実的なものなのかを検討し、誤りがあれば、それを修正します。こうして自動思考を修正すると、結果的に前向きな見方ができるようになり、それに伴って気分も楽になります。例えば、あなたの左腕に「しこり」が見つかったとします。あなたは、左腕のしこりをグリグリと確かめながら「もしかしたらガンかもしれない、死んでしまうかもしれない」と考え、不安と恐怖で胸がいっぱいになります。

[状況]左腕にしこりのようなものがある。

[自動思考]ガンかもしれない。死んでしまうかもしれない。

[気分]不安、恐怖、悲しみ

後日、病院で検査を受けたところ、あなたの左腕のしこりは、悪性腫瘍ではなく、脂肪がかたまっているだけで、なんの害もないしこりであることが分かりました。

[状況]左腕にしこりのようなものがある。

[認知]単なる脂肪のかたまりで、無害なしこりだ。

[気分]安心

今回の例では、ネガティブな自動思考を「病院の検査」という形で検討しましたが、実際に、自分でCBTを行う際は、次の節でご紹介する13種類の方法を使って、ネガティブな自動思考が本当に真実かどうかを検討します。

さて、これから、気分を楽にする方法を13個ご紹介します!これら全ての方法があなたの気分を改善するのに効果的だとは限りません。中にはうまくいかない方法もあるでしょう。しかし、13個中、少なくとも4つか5つは、辛い気分を取り除くのに驚くほど強力な力を発揮するはずです。

気持ちを楽にする方法[01]根拠と反証を挙げ、別の見方を発見する

根拠反証を挙げるテクニックは最もオーソドックスなCBTの技法です。まず自動思考を同定し、その自動思考が本当に真実かどうかを、このテクニックで検討します。自動思考を検証するには、その考えが真実である根拠と、その考えが真実ではない根拠(=反証)を思いつく限り列挙します。そして根拠と反証を出し尽くしたら、今度は、別の見方ができないかを考えます。

この方法はいわば「心の科学」です。科学的に物事を考える際は、ある仮説を支持する根拠と、仮説に反する根拠(=反証)を列挙した上で、より真実に近い考え方を導き出そうとしますよね。

例えば、「メールがなかなか返ってこない、自分が嫌われてしまったからだ」という自動思考を、この方法で検討し、別の見方ができないか。試してみましょう。

根拠(自動思考が真実だと思われる理由)

⇒普段は比較的返信が速いのに今回は返信がとても遅い。

反証(自動思考が真実ではないと思われる理由)

⇒メールに気が付いていないかもしれない。
⇒忙しくてすぐにメールを返信できない状況かもしれない。
⇒体調が悪くてメールの返信どころではないのかもしれない。
⇒返信文をじっくり考えていて、返信が遅くなっているのかもしれない。
⇒スマホに何かトラブルがあったのかもしれない。

別の見方

⇒確かに嫌われてしまって、メールの返信がないという可能性もゼロではない。しかし、メールの返信が遅いという根拠だけで「嫌われてしまった」という結論をだすのは、論理の飛躍であり、現実的な物の見方になっていない。何かすぐに返信できない事情があるのだろう。実際、自分だって、いつも必ず、すぐにメールが返信できるわけではないのだから。

このように、自動思考を同定したら、根拠と反証を挙げ、その結果として、より現実的な別の見方を考えるようにします。極端に言えば、ある自動思考について、たった1つでも反証が存在するならば、その自動思考は完全に正しいとは言えず、修正する必要があるのです。

【コツ】根拠や反証はなるべく「事実」であることが望ましいです。「今日は晴天だ」というのが事実で、「パソコンよりもスマホの方が便利だ」というのが「意見」です。

気持ちを楽にする方法[02]最悪のシナリオとその対処方法を考えるしテクニック

一旦、最悪のシナリオを考えてみましょう。その上で、もしその最悪のシナリオが現実化してしまったときの対処法を準備しておきましょう!この方法はCBTの専門用語で脱破局化(だつはきょくか)と呼ばれるテクニックです。ほとんどの場合、最悪の破局的なシナリオが実現することはありませんが、万が一、最悪の事態が起きてしまった場合に備えて、対処方略を用意しておけば、安心できますよね。

最悪のシナリオ
⇒メールの返信が遅いのは、自分が嫌われてしまったからだ。そして、その後、返信が来ることはなかった。

最悪のシナリオへの対処法
⇒なぜ嫌われてしまったのかを考え、仲直りするようにする。謝罪のメールを送る。

気持ちを楽にする方法[03]最善のシナリオを考える

次は、最善のシナリオを考えてみます。これは楽しい作業です。

最善のシナリオ
⇒返信は確かに遅めだったけれども、間もなく、返信が来た。メール本文には「遅くなってごめん!」と書いてあった。どうやら仕事が忙しく、すぐに返信できなかったようだ。

気持ちを楽にする方法[04]最も現実的なシナリオを考える

最悪のシナリオも最善のシナリオも、そうそう、起こるものではありませんよね。最悪のシナリオと最善のシナリオを参考に、最も現実的なシナリオを考えてみましょう。

現実的なシナリオ
⇒いろいろと忙しくしていたので、返信が遅れてしまった。メールが来たのは3日後だが、メール文面を読む限り、とくに嫌われているわけではなさそうだった。

気持ちを楽にする方法[05]当初の自動思考を100%信じるとどうなるかを考える

当初の自動思考「メールがなかなか返ってこない、自分が嫌われてしまったからだ」を100%信じたとすると、どんな影響がでますか(自動思考修正前の影響分析)。

例えば、

  • 不安や悲しみに苦しむ。
  • メールの返信が遅いという事態が起きる度に「嫌われた」と考え動揺するはめになる。

気持ちを楽にする方法[06]修正後の新しい見方を信じるとどうなるかを考える

当初の自動思考を修正するとどんな影響が考えられるでしょうか(自動思考修正後の影響分析)。

  • 安心していられる。
  • メールの返信が遅いからといって動揺せずに済む。

気持ちを楽にする方法[07]他人を参照ポイントにする

他人を参照ポイントにする方法を使えば、自分の考えを客観的に見ることができます。要はネガティブな自動思考と距離をとることで、より現実的な考えに修正するわけです。

あなたと親密な関係にある方(家族や友人)、もしくは、あなたに「架空の娘さん」がいると仮定して、そうした人々が「メールの返信が遅い!嫌われてしまったに違いない!」と悩んでいたら、あなたは、どんなふうに声をかけてあげますか?

 

(あなたの回答:          )

 

筆者はに娘はいませんが、仮にいたとしたら、きっとこう言ってあげると思います。

「メールの返信が遅いなんてよくあることだよ。相手が忙しいのかもしれないし、風邪かなんかで具合悪いのかもしれない。メールの返信が遅いからといって、たったそれだけの根拠で、”嫌われてしまった”なんって考える必要はないと思うよ。そのうち返信がくるから気長に待つといいよ。それに万が一嫌われてしまっても、世界が終わるわけじゃないしね!」

あなたが、親密な人や、架空の娘さんにかけてあげた言葉はあなた自身にも当てはまりそうですか?

気持ちを楽にする方法[08]メリット・デメリット分析

ある自動思考を持っているとき、その自動思考のメリット・デメリット分析をすることは、驚くほど役立ちます。ここでは自動思考の例として「恋人のいない人生なんてつまらない。生きるに値しない」という考えを取り上げてみたいと思います。

◆「恋人のいない人生なんてつまらない。生きるに値しない」と考えるメリット

⇒そう考えることで積極的に恋人を探すようになる。

◆「恋人のいない人生なんてつまらない。生きるに値しない」と考えるデメリット

⇒恋人がいない期間、いつも嫌な気分でいなくてはならない。
⇒1人で物事を楽しむことができない。
⇒「恋人がいなくても平気」と自立している人の方が魅力的なので返って良い出会いに恵まれやすい。しかし、この自動思考を信じていると、愛情に依存的で、魅力が無く、結果的に、余計に恋人ができなくなる。

こうして、この恋人に関する自動思考のメリットとデメリットを挙げてみると、「恋人のいない人生なんてつまらない。生きるに値しない」という考えを持つことは、デメリットの方が遥かに多いことが理解できます。そしてこの「理解」こそが、「恋人のいない人生なんてつまらない。生きるに値しない」という非現実的な自動思考を修正するのです。

気持ちを楽にする方法[9]受け入れの逆説

受け入れの逆説とは簡単に言えば「開き直り」や「諦め」のことです。人間は誰しも欠点があり、しばしば失敗する存在です。そうした自分自身の問題を、なんとか解決しようとあがくのではなく、受容してしまうのです。例えば、ひどく不安なとき、「まあ、確かに辛いけど、不安なときは、不安なままでいいや」と受け入れるのです。あるいは経済的問題に苦しんでいるならば、「とりあえず餓死する心配さえなければなんとかなるさ」と開き直ることも有効な「受け入れ」です。

とりわけ不安感に悩まされている場合は、受け入れの逆説が効果的す。不安になっても身構えないこと、じたばたとあがかないことが不安に対処するコツです。

気持ちを楽にする方法[10]不満一覧表

  1. ノートを準備して、黒ペンで不満や不安、心配などを思いつく限り全て書き出して下さい。
  2. 今度は赤ペンを用意して、一つ一つの不満・不安・心配について解決策を書きます。

たったこれだけのことでもだいぶ気分が楽になりますよ!

【不満一覧表の例】

不満・不安・心配事 解決策
嫌な上司がいて困っている。 「はいはい」と話半分に聞き、ふわふわと適当にやりすごす。
最近、眠れない。 病院で睡眠薬を処方してもらう。
どうしてもやる気がでない。 やる気は行動の後についてくる。

気持ちを楽にする方法[11]AWARE

AWAREはシンプルで強力なテクニックです。方法は簡単です。

  1. Accept:不安を受け入れる。
  2. Watch:判断することなく不安を観察する。
  3. Act:まるで不安がないかのように、不安を抱えたまま振る舞うようにする。
  4. Repeat:以上の3ステップを繰り返す。
  5. Expect:ベストの結果を期待する。

要は、不安な気持ちはそのままにして、それをどうしようともせず、そのままで、なすべきことをなす。というのがAWAREテクニックです。

気持ちを楽にする方法[12]問題解決アプローチ

認知を改善するよりも、辛い気分を引き起こしている問題そのものを解決する方が効果的なケースもあります。あなたが抱えている問題がなんにせよ必ず解決策はあるのです。例え絶望的で解決不可能な問題に思えても、なんとか切り抜ける方法は常にあります過去や今現在がどんなに過酷で辛いものでも、あなたは、いつでも、自分の人生を再開することができるのです。なぜなら、あなたの中には「内なる力」が眠っており、少し探せば、その力を発揮することができるからです。

ここで1つある名言を引用しましょう。

この世に難関などない。難関というのはあくまでも本人の主観の問題なのである。難関だと思っている自分があるだけだ。塚本幸一(ワコール創業者)

効果的に問題解決を図るには、ブレーンストーミングが有効です。

ブレストの手順

  1. お菓子や飲み物を用意しなるべくリラックスする。
  2. どんな馬鹿げた考えでもいいので、とにかく1つでも多く解決のためのアイデアを出す。
  3. 必ずアイデアの数を数えるようにする。
  4. アイデアの数が多ければ多い程、問題解決はうまくいく。

気持ちを楽にする方法[13]コーピングカード

コーピングカードとは「読む薬」です。コーピングカードに気持ちが楽になる考え方を書き込んでおいて、しょっちゅう眺めるようにしましょう!不安になってから焦ってコーピングカードを読むよりも、比較的、精神状態が安定しているときにコーピングカードを読む方が効果的だということが研究から明らかになっています。

【コーピングカードの例1】

どうしようもなく不安になったら次のことを思い出す。

⇒目の前の作業に集中する。
⇒映画など余暇的活動をする。
⇒不安なときは不安でもいいのだと考える。

【コーピングカードの例2】

やる気がでないときは次のことを思い出す。

⇒やる気は行動の後についてくるものだから、気分が乗るまで待っていても永遠にやる気は出てこない。
⇒全てを完璧にやる必要はない。とりあえず30分だけ取り組めばそれで十分だ。

尚、コーピングカードには、「京大カード(Amazonへのリンク)」を使うのが非常に便利です。

典型的な認知の歪みリスト

典型的な認知の歪みをご紹介します。典型的な認知の歪みとは我々が陥りやすい認知的誤りです。これらはいわば、歪んだ認知を修正するためのツールキットです。囲碁の世界で言う「定石」のようなものです。

自動思考を同定したら、以下の「典型的な認知の歪みのリスト」がご自身の自動思考の中に含まれているかどうかをじっくりと、注意深く、確認してみるといいでしょう。

1、全か無か思考[all-or-nothing thinking]

全か無か思考は白黒思考、二分割思考[dichotomous thinking]とも呼ばれ、状況を連続体ではなく、2つの極端なカテゴリーでとらえることです。言い換えれば、少しでも問題があれば、完全な失敗だととらえてしまう認知の歪みです。

  • (例1)100点じゃなければ意味がない。90点は0点と同じようなものだ。
  • (例2)仕事でミスをした。自分は価値のないダメ人間だ。

【解説】

物事は全て連続体です。例えば不安になってしまったとき、「こんなに不安なのだから、もうおしまいだ」などと全か無か思考に陥るのではなく、「その不安は100点満点中、何点?」と自問自答してみて下さい。大抵の場合は40点とか60点という答えが返ってくるでしょう。全か無か思考に陥った際は、「~は100点満点中何点?」と自問自答してみて下さい。こうしたスコアをつけることで、極端な考えから抜け出すことができます。このような技法をCBTでは認知的連続化と呼びます。

2、先読みの誤り[fortune telling]

先読みの誤りとは十分な根拠がないのに、未来はひどいものになると勝手に決めつけてしまうことです。

  • (例1)なかなかうつ病が治らない。きっとこの先、治ることはないだろう。
  • (例2)最近いろいろなことがうまくいかない。きっと未来は酷いものになるだろう。

【解説】

そもそも未来のことは誰にもわかりません。にもかかわず、十分な証拠もなく、未来を破局視するという考えは、現実的ではありませんよね。確かにうつ病が数年単位で長引くことはありますが、その事実だけでは、一生、治らないという根拠にはなりません。慢性のうつ病を患ったが今ではすっかり良くなっている人が世界には何十万、何百万といるのです。

3、感情的理由付け[emotional reasoning]

感情的理由付けは気分や感情を根拠に物事の良し悪しを判断してしまう認知の誤りです。また、自分が●●と感じるから、それが事実に違いないと思い込みます。要は気分と事実を混同してしまっているような状態です。

  • (例1)こんなに不安なのだから、うまくやれるはずがない。
  • (例2)自分はダメ人間のように感じる。だから自分はダメ人間に違いない。
  • (例3)罪悪感を感じる。きっと自分は周りに迷惑をかけてばかりの悪い人間なんだ。

【解説】

気分と事実を混同してしまうことは、よくある誤りです。何か強い不安を感じたときは、その不安が事実の反映だと誤解しがちです。現実にはたいして大きな問題がないのに、辛い気分のせいで、現実が悲惨なものに見えてしまうのです。しかし、どんなに心理的に苦しくても、それは主観の問題にすぎず、だからといって、現実が厳しい状況であるわけではありません。

4、レッテル貼り[labeling]

レッテル貼りは合理的な根拠を無視して、自分や他者に対して、固定的で包括的なレッテルを貼り、否定的な結論を出す認知の歪みです。

  • (例1)自分は怠け者だ。
  • (例2)自分は負け組だ。
  • (例3)あいつは馬鹿だ。

【解説】

「自分は怠け者だ」などとレッテルを貼ると、その影響で、本当に怠け者のように振る舞うようになります。しかし、実際は、人間は流動的で絶えず変化していく川のような存在です。ですから、なんにせよ、レッテルを貼ることは、論理的にナンセンスなのです。例えば、あなたは毎日、ご飯を食べますよね。そんな自分に「ご飯人間」とレッテルを貼ることに何か意味があるでしょうか?

6、心のフィルター[mental filter]

心のフィルター選択的抽出[selective abstraction]とも呼ばれ、全体像を見る代わりに、一部の、否定的要素に過度に着目してしまう認知の歪みです。それはまるで、1日中、良くない面ばかりを考え続けるようなものです。そんなことをしていたら、何もかもが暗く見えてしまいます。全体像を広く見渡せば、もちろん、その中に否定的要素も含まれますが、同じくらい肯定的要素も見えてきますよね。

  • (例1)仕事のミスのことばかり考えて、うまくいった部分を無視する。
  • (例2)自分の欠点ばかりに過度に注目して長所を過小評価する。

【解説】

落ち込んでいるときには、否定的要素にばかり目がいきがちです。そうすることで、さらに悲観的な気分になってしまいます。意識的に肯定的側面にも目を向けるようにしましょう。

7、過度の一般化[overgeneralization]

過度の一般化単純化とも呼ばれ、現状を遥かに超えた、大雑把で否定的な結論を出してしまう認知の歪みです。たった一つの良くない出来事から飛躍して破局的な結論に至ってしまいます。十分な根拠がないにもかかわらず単純に悲観的な結論を信じてしまいます。

  • (例1)気になる異性を食事に誘ったが断わられたので、もう自分は一生、結婚することができない。
  • (例2)就職面接に何社か落ちたので、就職は絶望的だ。
  • (例3)飲み会で居心地が悪かったので、この先、自分には友達ができないだろう。

【解説】

たった1つか2つ問題が生じただけで、それ以外の、根拠を一切、検討せず、「誤った法則」を導いてしまうのが過度の一般化です。たとえ、就職面接に10社落ちたとしても、それだけの事実では、「就職不可能の法則」を導くことはできません。日々の生活の中でなんらかの良くない出来事が起きとしても、いたずらに、一般化してしまわないよう注意しましょう。

8、べき思考[”should” and “must” statements]

べき思考とは、ねばならない思考とも呼ばれ、自分や他人の振る舞い方に、厳密で、固定的な理想を要求し、それが実現しないことを最悪視する認知の歪みです。

  • (例1)1日12時間は勉強しなければならない。
  • (例2)職場では常にベストを尽くさなければならない。

【解説】

べき思考というのは、自分が自分自身や他人に対して、勝手につくったルールのことです。自分がつくったルールなのですから自分で変えることもできます。「~したい」と「~しなければならない」をごっちゃにしてはいけません。頭が良くなりたいから勉強をしたいのであって、勉強しなければならないから、勉強するわけではないのです。べき思考の厄介な点は、自分自身に、無用のプレッシャーをかけ、それによって、自分からやる気を奪ってしまうことです。

べき思考に陥ったときは、「誰がそうしなければならないとった?どこにそうすべきだと書いてある?」と考えてみて下さい。

9、拡大視/縮小視[magnification/minimization]

拡大視/縮小視は自分自身、他者、状況を評価する際、否定的側面を不合理に重視し、肯定的側面を不合理に軽視する認知の歪みです。

  • (例1)(小さな失敗にもかかわらず)なんて大変なミスを犯してしまったんだ![拡大視]
  • (例2)(一定の成果を挙げたにもかかわらず)こんなの単に運が良かっただけだ。[縮小視]
  • (例3)(自分の長所を褒められて)そんなことは取るに足らないことですよ。[縮小視]

【解説】

落ち込んでいるときは、自分の短所に極度に注目してしまい、長所を無視してしまいます。また、何か、問題が起きると、現実より遥かに大きな脅威だとみなしてしまいます。また他者については、悪い面ばかりが目に付いてしまい、その人の良い面を無視してしまいます。何か問題が起きた際は「実はこの問題を現実以上に拡大視していないだろうか?」と考えるといいでしょう。

10、読心術[mind reading]

読心術とは十分な根拠がないにもかかわらず、他者の考えを、自分が分かっていると思い込む認知の歪みです。つまり相手は~と考えているに違いないと独断してしまうわけですね。

  • (例1)異性を食事に誘って断れた。相手は自分のことを嫌っているのだろう。
  • (例2)仕事でそれなりの成果を挙げたが上司は自分のことを軽視しているに違いない。
  • (例3)プレゼントをあげたがあまり嬉しそうな素振りを見せなかった。きっとプレゼントが気に入らないのだろう。

【解説】

落ち込んでいるときは、相手の考えが自分にとってマイナスものだと、根拠もなく、決めつけてしまいがちです。しかし最終的には、相手に直接確認するまで、本当はどんな風に思っているのかを知ることはできません。勝手に、相手の考えを決めつけないよう普段から注意するといいでしょう。

11、個人化[personalization]

個人化とは他者の否定的な振る舞いを他のありそうな見方を考慮せず、自分のせいだと思い込むような認知の歪みです。すなわち、何か問題が生じたとき、自分に責任がないような場合でも、自分のせいにしてしまうということです。

  • (例1)父の機嫌が悪いのは、きっと自分が何か悪いことをしたせいだ。
  • (例2)会社の業績が悪いのは、自分の努力が足りないせいだ。

【解説】

個人化は良くない出来事を理由もなく自分のせいにしてしまうことです。ある人の行為の結果はその人自身の問題であって、あなたが責任を負い、罪悪感に苦しむ必要はないのです。

典型的な認知の歪みのリストを使いこなそう!

「典型的な認知の歪みリスト」は、自分自身を苦しめるネガティブな自動思考を修正するのにとても有効です。自動思考を同定し、ノートに書きだしたら、まずは、こうした認知の歪みが潜んでいないかを検討してみて下さい。

例えば筆者は、以前、「自分は意志の弱いダメ人間だ」という自動思考を持っていました。この自動思考の中には、どんな認知の歪みが隠れているでしょうか?

【感情的理由付け】自分がダメ人間だと感じることは、ダメ人間である根拠にはなりません。

【レッテル張り】意志薄弱だ。ダメ人間だ。というのは典型的なレッテル貼りです。

【縮小視】自分の意志力を過小評価しています。うまくやっていることもたくさんあるのに。

【拡大視】セルフコントロールできなかった経験を、必要以上に大きな問題だとみなしています。

【全か無か思考】ときにはうまくセルフコントロールできない場面もあるが、それで意志薄弱だと決めつけるのは明らかに現実的ではありません。意志力が0なわけではないのです。60点とか70点くらいはあるわけです。

【心のフィルター】意志力を発揮できなかったときのことばかりを考え、しっかりとやるべきことをやった経験を無視している。

【過度の一般化】少し物事を先送りにしたという理由だけで、不合理にダメ人間だと決めつけています。

うつ病や不安障害といった精神疾患はあなたのせいではありません!

例えば、うつ病にかかると、多くの患者は、「うつ病になってしまったのでは自分のせいだ」という具合に、自分自身を責めがちです。しかし、うつ病などの心の病気に罹ってしまったのは、けっしてあなたのせいではありません。あなたは、肺炎にかかった人に「君が悪いんだ!」と責めるでしょうか?そんなのおかしいですよね。それにあなたは、自らうつ病になるよう、何か特別な努力をしたわけではないですよね。つまり、心の病気に罹ってしまったのは、あなたのせいではないのです。

自分でCBTを使って気持ちを楽にしてみよう!

まずノートとペンを用意して下さい。そして、不安、悲しみ、惨めさといったネガティブ気分を引き起こしている自動思考を意識的に探し、同定してみて下さい。自動思考が同定できたら、それをノートに書き写しましょう!

そして以下の質問にノートとペンを使って回答してみて下さい。

  1. その自動思考が真実だと思える理由(=根拠)を思いつくだけノートに記載しましょう。
  2. その自動思考が真実ではないと思える理由(=反証)を思いつくだけノートに記載しましょう。
  3. 1と2を参考に【別の見方】を考え、ノートに書き込みましょう。
  4. 起こり得る最悪のシナリオを考えて、ノートに書き込みましょう。
  5. 最悪のシナリオが実現してしまった際の【対処法】をノートに書き込みましょう。
  6. 今度は最善のシナリオを考え、ノートに書き込みましょう。
  7. そして5,6を参考に、現実的なシナリオを、ノートに書き込みましょう。
  8. 当初の自動思考を100%信じていると何が起きるかをノートに書き込みましょう。
  9. 自動思考を修正すると、その結果、どんなことが起きるかをノートに書き込みましょう。
  10. もしあなたと親密な方____かあるいは、架空の娘さんが、あなたと同じ問題で苦しんでいるとすれば、あなたは、なんと言ってあげますか?
  11. 10であなたが言ったこと、アドバイスはあなた自身にも当てはまりますか?
  12. あなたを苦しめる自動思考の中に「典型的な認知の歪み」がいくつ含まれているかを確認しましょう。

まとめ

  • 状況そのものが気分を左右するわけではない。
  • 状況をどう理解するかだけがあなたの気分を決める。気分は全て考え方次第だ。
  • 意識さえすれば簡単に自動思考を同定できるようになる。
  • ネガティブな自動思考を同定し、修正すれば、気持ちが楽になる。
  • 「根拠と反証を挙げ別の見方を発見する方法」など認知を修正する方法はたくさんある。
  • 「典型的な認知の歪みのリスト」は自動思考の修正におおいに役立つ。
  • 認知行動療法は現実思考だ。真実があなたを自由にする!
  • 自分で認知行動療法を行う際は必ずノートとペンに書き込むようにしよう!PCやスマホでもOKです!

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