自力で本を読み「認知行動療法」を成功させるための秘訣


『自分でできる認知行動療法入門』的な、本を買ってきて、実際に、家で取り組んでみても、「ぜんぜんうつ状態や不安、無気力といった症状が改善しないなぁ・・・orz」と思い悩むことがある。

かといって、認知行動療法のカウンセリングを利用するのは費用的に厳しいし。

そんな風に困ってはいないだろうか?

この記事はセルフヘルプ(自力)で、認知行動療法(CBT)を試してみたが、なかなか上手くいかなかった人の役に立ちたくて書いたものだ。

自分ひとりで、カウンセラーに頼らず、認知行動療法を成功させ、辛い憂うつや不安を解消し、自分の人生を取り戻したい!という方の参考になれば幸いである。

かく言う、筆者自身も、3年以上、認知行動療法を自力でやったが、まったくと言っていいほど、効果が出ず、何度も諦めかけた。

しかし、セルフヘルプで認知後療法を実施する際のコツをつかんでからは面白いようにうまくいくようになった。以下では、筆者がそうした経験から得た、秘訣をわかりやすく解説する。

認知行動療法のセルフヘルプを成功させる秘訣

認知行動療法は自分でやるにせよ、カウンセラーの力を借りてやるにせよ、デパスなどの気分安定薬ほどの即効性はない。

しかし、すぐに効果が出ないからといって「認知行動療法は役立たない、どうせ自分は、この先もずっと辛い思いをし続けるんだ」と考えないようにする。

あるいは、「せっかくほとんどない気力を振り絞って、1時間も認知行動療法をやってみたのに、効果が無かった。こんなにがんばっても効果が無いなら、もう認知行動療法に取り組むは無理だ」等と考えなようにする。

そう考える代わりに、

「認知行動療法ですぐに劇的な気分改善効果が出ないのは当たり前、薬じゃないんだから!でも練習を重ねていくうちに、きっと自分の心の苦しみを全て取り去って、明るく、意欲的で、充実した毎日を送れるようになる。”不安や憂うつがずっとこの先も永遠に続いて、けっして治ることはない”と頑なに信じ込むこと自体がうつ病や不安障害の典型的な症状なのだ(実際はもし酷い憂うつ感や強い不安感が10年、20年と続いていても、認知行動療法を使えば、早ければ1~2か月で、ほぼ完全に治すことができる)!世界中で認知行動療法のセルフヘルプ本を読み実際に自分の人生を取り戻した人は何十万、何百万人といる。自分の何倍も重い症状があっても、認知行動療法で自分で自分をすっかり治してしまった人も数えきれないほどいるのだ。自分もその例外ではないのだ!」

と考えるのはどうだろうか?

認知行動療法で回復に至る道筋

認知行動療法の初心者がセルフヘルプ本を読みながら歪んだ認知の修正の取り組み、回復に至るまでに、どのような道筋を通ることが多いのか。その典型例を以下に示した。

以下のような道筋で回復に至るということが理解できれば、途中で、認知行動療法を見限ってしまうことを防ぐのに役立つだろう。

①『自分でできる認知行動療法入門』的な本を買ってきて、解説に従って、自動思考の修正にチャレンジするが、なかなかうまくいかない。その理由は簡単で、《認知行動療法のスキル》がまだまだ未熟だから。認知行動療法のスキルは自転車や車の運転と同じで、いろいろ思考錯誤していく中で身についていくものなのだ。

ちなみに、この①の段階で、多くの人が、認知行動療法を使って、自力で自分の病気を治すことを諦めてしまう。実は認知行動療法は非常にパワフルで驚くほど効果的なのに、この段階で、見限ってしまうのは、とてももったいないことだ。

②自動思考の修正がだんだんうまくなってくる。時には、30分~1時間、認知行動療法をするだけで、強い不安感がほぼ全く無くなることもある。その一方で、1時間以上かけて自動思考の修正を試みたのに、なんの気分改善効果も得られないことも多い。

※この②の段階では、「確かに認知行動療法は有効だけど、すごく気力を使うし、うまくいかないこともたくさんある。本当にこんな感じで認知行動療法に取り組み続ければ、治るのかな?」等と考えることが多いだろう。

③認知行動療法のスキルが大きく高まり、認知行動療法を継続すれば、数週間~数か月後には長年抱えている苦しい心の問題を完全に治せるようになると確信する。

自動思考の修正がうまくいかなかった場合の考え方

30分~1時間、時には2時間以上かけて、たった1つの自動思考の修正に取り組むことがある。その結果、残念ながら気分改善効果が得られなかったとき、どのように考えるのが、一番現実的でかつ効果的だろうか?

最もまずい考え方はこうだ。

「気力が無い中、なんとかやる気を振り絞って、自動思考の修正をがんばったのに、なんの効果もなかった。認知行動療法なんてきっと自分には役立たないんだ。骨折り損のくたびれ儲けだった…」

上記の「認知行動療法の失敗」に関する自動思考は現実的ではない。「今回、効果がなかった」という部分にばかり注目し、いたずらに悲観的に失敗を捉えてしまっている。

自動思考の修正がぜんぜん上手くいかなかった場合、以下のように考えると良い。

①気分改善効果があまりにも小さすぎて、効果に気が付かなっただけかもしれない。ほんの小さな気分の改善にも大きな意味がある。なぜなら、僅かな改善をたくさん積み上げていけば、チリも積もれば山となるということわざの通り、大きな治療効果を得られるからだ。

②例え、なんの効果も得られなくても、認知行動療法のスキルを高める効果は確実にある。良い練習になった!

③例えば、「1日中寝込んでいる」とか「1日中ボーっと椅子に座ってネットを見ている」という活動よりも、「認知行動療法に取り組む」という活動の方が、自信につながる。自信(=自己効力感)を高めるような活動を増やせば増やすほど、うつ病や不安障害の症状は和らいでいく!

初心者が陥りがちな落とし穴、なぜ自動思考の修正に失敗するのか?

認知行動療法の最もスタンダードなやり方は、①辛い気分の元となっている自動思考を特定する。②その自動思考を支持する根拠を思いつくだけ全部、書き出す。③その自動思考を反証する根拠を思いつくだけ全部書き出す。④その上で「別の見方はなにか?もっと適応的で現実的な考えはどんなものか?」と自問自答し、より現実的な新しい考えを書き出す。

しかし、この過程で、早くこの苦しい不安から逃れたい。まとわりつく酷い憂うつ感をとにかくなんとかしたい。そんな想いが強すぎると、自動思考の修正に取り組む過程で以下のようなことが起きる。

①自動思考を支持する根拠を軽視してしまう。

②自動思考を反証する根拠をなんとか捻りだそうとし、説得力に欠ける、弱い根拠を無理やりでっち上げてしまう。

③新しい考えを書くときに、十分な根拠もないのに、ポジティブなことを書いてしまう。要は、ネガティブな方向に歪んでいた認知を、ポジティブな方向に歪んだ認知にしてしまう。認知行動療法では、ネガティブかポジティブかに関わらず、より合理的で妥当性が高く現実的な歪みの少ない認知へと自動思考を修正することが一番大切なのに、そのことを忘れてしまっている。

この①②と逆のことをやるようにすれば、より効果的に自動思考を修正できる。例え、辛い気分のもととなっている厄介な自動思考であっても、それを支持する根拠を、なるべく多く、正確に列挙することは、大変効果的である。また、通常、自動思考を反証する根拠を探すのには根気がいるが、焦って、弱い根拠をでっちあげないようにする。

この2点に気を付けることは、認知行動療法を成功させるための重要な秘訣だ!

必ず紙に手書きで書かないといけないと思い込んでやる気を失っていないか?

結論から言えば、自動思考を修正する際、めんどうな手書きにこだわる必要はない。

お勧めはスマホのメモ帳を使うことだ。

これなら寝ながらでもできるし、病院の待合室でもできる。

悲観的な自動思考への反論が思いつかない場合の対処戦術

先ほど、最もスタンダードな自動思考の修正は、根拠と反論をそれぞれ列記した上で、別の新しい考え方、より合理的で、妥当性のある現実的な考え方を示すことだと述べた。

この過程で、どうしても、自動思考を反証するための証拠が見つからない場合がある。

そういう場合は「証拠を作ってしまえばいい」のだ。

例を見ながら解説しよう。

 

<ある主婦Aさんの事例>

ある主婦のAさんは、もう11年にもわたって、重度のうつ病に苦しんできた。医者からだされた薬はしっかり飲んでいるが一向に良くならない。1日中外出できず、家に、引きこもっていることが多い。たまに外出できたとしても徒歩2分のセブンイレブンに行くくらいだ。また、ちゃんと睡眠時間をとっているのに、いつも、疲労感を感じていて体が重い。旦那には申し訳ないと思いつつも、ほとんど全く家事ができない。風呂に入るのもめんどうで、2,3日、シャワーすら浴びないことがよくある。そこでAさんは『自分でできるうつと不安の認知行動療法入門』という本を買ってきて、「自分は家事ができない」という認知を修正しようと試みた。

Aさんのノートには、「自分は家事ができない」という自動思考を支持する根拠がたくさん書いてある。しかし、どうやら筆が止まってしまったようだ。自動思考を反証する根拠が何一つ思いつかないらしい。

通常、自動思考への反論が1つも見つからないことはあり得ない。

恐らくAさんは、なんらかの反証を見逃してしまっているのだろう。

こういうとき「ないなら作ってしまえばいいじゃない!」の精神で

証拠を作る

ことは非常に役立つ。

Aさんのケースで言えば、例えば、「5分間だけ皿洗いをしてみる」、「浴槽に溜まった昨日の残り湯を抜く(これなら45秒くらいでできそうだ)」、「2分間だけ本棚の整理をする」くらいのことをすれば、立派に、「家事ができない」という自動思考が必ずしも正しくないことを示す証拠を手に入れたことになる。

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