森田療法のポイントを簡潔に説明する


森田療法における「あるがまま」とは

森田先生は「あるがまま」の態度が重要だという。「あるがまま」とは簡潔に言えば以下の通りである。

苦しくても、そうした不快気分をどうしようともせずに、持ち耐えて、なすべきことはなす。という態度である

森田療法を学びはじめて、最初に「あるがまま」という言葉を聞くと「ありのまま」と勘違いしてしまう場合がある。

しかし、「ありのまま」とは、例えば勉強する気がしなければ、そのありのままに自分を肯定するという態度であって、「あるがまま」とは似ても似つかない態度だ。

「あるがまま」の態度は、例え勉強する気力がなくても、【やりたくない】という気分はそのままにして、せっせと勉強する。というような態度である。

森田療法でよく使われる言葉に「気分は気分。仕事は仕事」というフレーズがある。

つまり、仕事・勉強というのは、気分や興味のためにやることではないのだ。と考える。

そうして、嫌々ながら仕方なく仕事・勉強に打ち込むうちに、「やればできる」という自信がでてくる。それだけはなく、そうして努力し、進歩する中でこそ、【充実感】や【満足感】を感じるのだ。

こう説明すると、「なんだ、森田療法っていうのはただ我慢してがんばれってことなのか」と思われる方もいるかもしれない。

しかし、森田療法は単純に我慢や忍耐を勧めるものではない。

そもそも、人間には誰しも進歩したいという欲求がある。これを森田療法では「生の欲望」と呼ぶ。

森田先生の言葉を借りれば、一切進歩しない生活なんて生きている意味がない。ということになる。

そこで、「あるがまま」にする事項は2つあることが分かる。

  • 進歩したい欲求(生の欲望)をあるがままにする。
  • 不快な気分をなんとか取り除こうとせずに、あるがままにする。

例えば、大学受験や資格試験の勉強であれば、「より多くの知識を身に着けて試験に合格したい!」という進歩欲求を、抑圧するのではなく、あるがままにする。こうした進歩への欲望を、あるがままにするということは、一生懸命に勉強するということである。

一方、普通、仕事や勉強はけっして楽なものではない。もちろん取り組んでいるうちに興味が出てきて面白く感じるタイミングもある。しかし、基本的には仕事・勉強は「やりたくないなぁ」・「単調で飽きてきたなぁ」等と嫌な気分を伴うものだ。こうした苦しい気分も、それを邪魔なものだと考え、なんとか気分のやりくりをしようとせずに、ただあるがままに放っておく。

このように、進歩して立派な人物になりたいという願いをあるがままにしつつ、仕事・勉強に伴う不快気分もあるがままにすること。それが森田療法の基本コンセプトだ。

事実本位と気分本位

事実本位とは、例え今日1日が気分感情的に辛く苦しいものであっても、事実として、仕事なり勉強なりが進んでいれば、それで良し。とする姿勢である。

一方、気分本位とは、物事や出来事の評価を、気分が良かったか、悪かったかで判断する姿勢のことだ。

森田先生は、「事実本位であること、気分本位を脱却すること」が大切だと主張している。

分かりやすいように、事実本位と気分本位のメリット・デメリットを比較してみよう。

【気分本位のメリット】

やりたくないことや不安なことを避けることで、一時的に安心できる。

(例)英単語の暗記をしようと思ったが、無味乾燥でつまらないので、テレビを観る。

【気分本位のデメリット】

気乗りしないことや、不安に感じることを避けるので、進歩することができない。

(例)苦手なお客さんをついつい後回しにしてしまい、顧客との信頼関係に問題が生じる。

【事実本位のメリット】

気分に関係なく、客観的にみて、やるべきことを実行できるので、仕事・勉強でも成果を挙げることができるし、自信もつく。

(例)仕事・勉強は気分のためにやるものではないと心得、嫌々ながらでも、ドシドシ実行することで、職場で評価されたり、知識を得ることができる。

【事実本位のデメリット】

特に無し!

こうして事実本位と気分本位を比較すると、気分本位な生き方は自分自身をいじめるような態度だと分かる。なぜなら、人は本来、目標を持ち、夢や願望を持ち、それらを実現することに、真の実在感や深い満足感を感じるものだからだ。しかし、気分本位のスタンスに立つ限り、なかなか自己実現はできない。仕事や勉強で大きな成果を創出するには、どんなに苦しくてもやり遂げる必要があるからだ。

このように気分本位の姿勢でいれば、学力も仕事上の評価も得難いのである。気分を基準に物事の良し悪しを判断してばかりいると、一向に進歩しないので、気分は苦しいながら、やるべきことを実行している人に比べて、惨めな結果に終わることになる。

例えば、営業の仕事をしていて、やりたくなくても、仕方なくバリバリ働く人は、名誉・お金・自信を得ることができる。一方で、たまたま気分が良いときだけ営業活動をし、意欲が下火になってきたら、そのあたりの喫茶店で休む。というような営業担当は、よほどの天才でもない限り、ノルマが達成できず、上司から詰められ、出世もできず、ますます自信をなくしていくばかりである。

気分本位な生き方をしていれば、たった一度の人生なのに、充実感・満足感・達成感を得ることが難しくなる。これはとっても気分の悪いことだ。皮肉にも「いつも良い気分でいたい」と願うほど、虚しく、つまらない人生になってしまうのだ。気分本位な生き方は自分で自分自身を薄暗く、狭い牢獄に閉じ込めてしまうようなものだ。

一方、事実本位な生き方は自分自身のポテンシャルを最大限に発揮することができる。結果的に自由で面白い人生を歩むことができる。

大切なことは仕事なり、勉強なりから生じる不快感や苦悩を邪魔なものとして排除しようとするのではなく、素直に認め、それに抵抗したり、それをごまかしたり、回避したりしないで、そのまま受け入れることである

そして向上発展の欲望に対してもあるがままにし、ドシドシ建設的な活動をすることが肝心である

意欲や興味が出てきたら仕事・勉強をしようという態度は感心できない。どんなにやる気がしなくても、どんなにつまらないことに思えても、行動することで道は開けるのだ。

「精神的な苦痛を、ただ純粋に苦しむ」という態度が、実はその苦痛に執着しないための最善策なのである。

最後に筆者の恩師に教えてもらった言葉を紹介します。

 

「嫌だな、不安だな、やりたくないな」と思ったときがチャンス!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA